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口呼吸(こうこきゅう)の弊害と鼻呼吸(びこきゅう)の勧め👄👃🏻

 

 

院長の中村卓です。

今回は「口呼吸と鼻呼吸」についてお話しします。

口呼吸(こうこきゅう)の弊害と鼻呼吸(びこきゅう)の勧め👄👃🏻

 

 

実は私自身、小さい頃から呼吸器系が弱く、よく扁桃腺を腫らす子供でした。

鼻炎で鼻が詰まりやすかったこともあり、よく口をポカンと開けた子でもありました。

奥歯をかみしめたままでも、上下の前歯の間にフォークを差し込めるぐらいの隙間がありました。

普通の小学生はそんなことに興味は持たないと思いますが、父親も歯科医師だったので歯並びを意識していたのかもしれません。

 

小学生の時にちょうど初めての東京オリンピック(1964年)が開催され、「巨人の星」や「サインはV」を筆頭に、いわゆる「スポ根もの」が大はやりの時期でした。

私は小学6年生の時には50m走はクラスで一番でしたが持久走はまるでダメで、自分には瞬発力はあっても根性がないんだと思っていました。

でものちに大学で歯科の専門教育を受けるようになって、その認識が間違っていたことに気が付きました。

 

実は換気(酸素を体内に取り込み二酸化炭素を排出する)機能が弱かったのです。

短距離走の最中には、体がブレてスピードが落ちないよう息は止めたままですが、長距離走では筋肉が長時間にわたってたくさんの酸素を必要とするため、いかに効率よく酸素を取り込むかが重要です。

鼻よりも口のほうが空気の通り道が広いので、しんどくなってくると、どうしても口で呼吸してしまいます。

 

ちょうどこの原稿を書いている今、箱根駅伝の中継をしていて、解説者の人が疲れの見えてきた選手を「口が開いてきましたね」と評しています。

もちろん筋肉の質の差によって瞬発力のある人と持久力のある人は居ますが、オリンピック級のアスリートを除けば、その部分は思春期を過ぎてからでも努力によってかなりカバーできます。

ところが呼吸機能の発達には筋肉の発達以上に時期の影響が大きいと考えられます。

事実20歳を過ぎてからボディービルを始めても世界大会に出る人は居ますが、20歳を過ぎてから水泳を始めてオリンピックに出る人は居ません。

 

そのことに気づいてから、私は自分の呼吸機能を高めるため、ジムに通って有酸素運動をしたり、水泳をしたりしてみましたが、正直なところあまり続きませんでした。

いくら健康に良くても、好きでもないことを自分の意志だけで明確なご褒美もないまま続けるのは困難です。

実際、運動すればするほど口呼吸が増えてしまいます。

「じゃあ口呼吸はダメなの?鼻より効率が良いのだから、それで良いでしょ?」と思いませんか?

酸素を取り込むという目的だけなら、私もそれで良いと思います。

では逆にお尋ねしましょう。

 

「じゃあ、なぜ鼻は必要なの?」

 

匂いをかぐために必要なのでしょうか。それもありますが、それだけなら蛇のように舌で匂いを感じ取っても良いのでしょう。

食事中も呼吸できるようにでしょうか。

それもありますが、飲み込む瞬間には息を止めざるを得ません。

実は鼻には「吸い込む空気からゴミをこしとって、湿度を加える」働きがあります。

 

 

コロナが流行し出して皆さんがマスクをつけるようになったのはなぜでしょうか。

もちろんウイルスを吸い込まないためですね。(自分が持っているウイルスをバラまかない働きもありますが。)

鼻にもある程度バイキンやウイルスをこしとる働きがあるのですが、それだけでは不充分なのでマスクをします。

朝起きた時に喉が渇いている人は居ませんか?

夜中無意識に口を開けているからですね。

しかも喉や肺の粘膜は、乾くと防御のための粘液が減って、バイキンやウイルスが体内に侵入しやすい状態になります。

口呼吸(こうこきゅう)の弊害と鼻呼吸(びこきゅう)の勧め👄👃🏻

 

 

 

 

随分前置きが長くなりましたが、ようやく本題にたどり着きました。

 

つまり「口呼吸」は激しい運動など体内に効率よく酸素を取り込む必要がある場合には有効ですが、普段の生活では好ましくない点が勝ってしまいます。

少なくとも息を「吸う」時には鼻の穴から吸っていただきたいのです。

でもこればかり意識していては、他のことが手に付きません。

 

 

 

そこで提案です。

昼間起きている時には、100%とは言いませんのでなるべく唇を閉じるように意識してみて下さい。

そして特に朝口の中が乾きやすい方は、寝る時に口の中央に縦向きにセロテープを貼ってみて下さい。

 

これは私自身も20年以上前から実践している方法で、実験的に始めた頃は、「寝ている間に窒息死してしまうんじゃないか?」と不安でしたが、多少鼻詰まり気味でも横を向いていると片方の穴からは息が吸えますし、使っているうちに2~3ヶ月で鼻詰まりも解消されてきます。

本当に苦しい時には無意識にテープを剥がしますし、これをするようになってから、劇的に睡眠が深くなり、風邪をひかなくなりました。

 

近頃は「鼻呼吸テープ」や「口閉じテープ」といった商品名のモノも売られていますが、余程かぶれやすい人でなければ、普通のセロテープで充分安上がりで間に合います。

一番ポピュラーなセロテープは幅12㎜ですが、1枚では足りないので35㎜程度の長さが2~3枚必要です。私自身はこれも面倒なので、今では幅24㎜のモノを1回1枚使っています。

 

この状態では基本的には吸気は鼻から、呼気は口からになりますが、前述のようにそれで事足りるのです。

いびきや歯ぎしりもゼロにはなりませんが、少しマシになります。

 

但し、うつぶせに寝かせただけで窒息してしまうような小さなお子さんや、満足に手足を動かせないような病気のお年寄りなどには無理ですからおやめください

口呼吸(こうこきゅう)の弊害と鼻呼吸(びこきゅう)の勧め👄👃🏻

 

そういった方も含めてお勧めなのが、当院でも紹介している「あいうべ体操」や「舌体操」です。

また「ガムトレーニング」も効果があります。

これらは舌や口の周りの筋肉を鍛えることで口元を引き締め、口呼吸を防ぐ方法です。

 

最近は日本中で口をポカンと開けている子供が増えているようで、小さい頃からの鼻呼吸の習慣づけが必要だと言われ始めています。

歯科でもそのための訓練が一部保険制度に導入されるようになりました。

口呼吸(こうこきゅう)の弊害と鼻呼吸(びこきゅう)の勧め👄👃🏻

 

 

私には二人の娘がいます。

二人ともすでに結婚していますが、彼女たちが小学生の頃に上記のような問題に気が付いた私は、当時あいうべ体操もまだ世に出ていなかったので、二人に水泳を習わせ吹奏楽を勧めました。

以前から吹田市では小学生の水泳教育を奨励していますが、水難事故を防ぐだけでなく、何より学童期の心肺機能の発達に役立ちます。

また吹奏楽も鼻で吸って口で吐くので、とても良い効果があります。

同時に歯並びにも乱れがあり、口呼吸も懸念されたので、専門医ではありませんが自分自身の勉強も兼ねて、二人に矯正治療を施しました。我が子が将来どんな道に進むにせよ、何をしたいというにせよ、すべて体が資本です。

恩に着せる必要もないし、知らず知らずのうちが良いと思いますが、子供の無限の可能性がなるべく狭まることの無いよう「健康」という基本環境を整えてやるのは、親の務めだと思っています。

 

ちなみに人間を除く多くの動物では、食事をしながら呼吸ができます。

それは気道と食道が分かれているからです。

人間が「誤嚥」のリスクと引き換えに「言葉」を手に入れたお話が、当院裏の榊原耳鼻咽喉科クリニックの記事(https://e33clinic.com/archives/160/)にも記載されていますので、一度読んでみて下さい。

「誤嚥」とオーラルフレイルについてのお話は、またいずれ書かせていただきます。

 

最後までご精読ありがとうございました。